※2020年1月8日追記
11月2日、横浜でのイングランド対南アフリカ戦で南アフリカが勝利し、9月20日から1か月半にわたり開催された ラグビーW杯日本大会は幕を閉じました。
日本代表の快進撃も影響して、開幕前に想像していたよりも遥かに盛り上がったと感じている方が多いのではないでしょうか。
また、2019年はユーキャン新語・流行語大賞で年間大賞に「ONE TEAM」が選ばれたり、NHKで中継された日本対南アフリカ戦が41.6%を記録するなど、ラグビーW杯が話題となった1年でした。
また、東京オリンピック・パラリンピックが開催されることから、2020年もスポーツが話題となる1年になるでしょう。
今回は、ラグビーW杯終了から数か月経過して明らかとなってきたデータをもとにラグビーW杯が与えたインバウンド効果を検証し、東京オリンピック・パラリンピック観戦者の訪日滞在傾向の予測をしていきたいと思います。
ラグビーW杯日本大会の盛り上がり
ラグビーW杯日本大会は全国12都市で開催され、台風で中止の3試合を除く45試合が実施されました。計170万4,443人の観客が訪れたと発表されています。
ラグビーW杯日本大会の概要と前回大会からの事前予測は「あなどれないラグビーW杯のインバウンド効果」をご覧ください。
チケットは販売可能な座席の99・3％にあたる約184万枚が販売されました。
大型ビジョンでの試合観戦が楽しめる全国12都市16カ所のファンゾーンには、約113万7,000人が訪れたといわれています。前回大会のファンゾーン入場者数の100万人余りを上回り、歴代最多を記録しました。
大会はオンライン上でも盛り上がり、ソーシャルメディアの閲覧数は前回のイングランド大会の4倍以上となる17億回に上りました。
こうした反響の大きさもありラグビーW杯の経済効果は4,370億円と試算されています。
ラグビーW杯日本大会のインバウンド効果
観光庁のアンケートによると、ラグビーW杯期間中に訪日していた外国人のうち、ラグビーW杯を観戦していない人の訪日消費額は15.9万円でした。
一方、ラグビーW杯を観戦した訪日外国人の消費額は38.5万円と、観戦していない人に比べて2.4倍だったことが分かりました。
全体としては、ラグビーW杯の経済効果は4,370億円にまで及びました。
また、2019年9月のラグビーW杯出場国からの訪日外国人数は、前年同月比で36%もの増加を記録しています。
準々決勝を含め5試合が行われた大分県の9月時点の調査では、14日間に少なくとも15万人が宿泊し、このうち外国人は5万3千人余りだとしています。
その中でも、欧米豪からは約1万3千人と2018年同月の4倍以上に達しました。
日韓関係悪化による訪日韓国人の減少が九州各県に影響を与えている中で、訪日欧米豪人が多く訪れたというのは嬉しいニュースでした。
【検証】なぜラグビーファンの訪日消費額は多かったのか
考えられる理由は4つあります。
1つ目は、ラグビーW杯観戦者は欧米人やオセアニア人が多かったことです。
ラグビーW杯に出場した国のうちアジアは日本のみで、ほとんどが欧米やオセアニアの国々でした。
訪日欧米豪人は訪日アジア人に比べて訪日滞在日数が長く消費額も大きいため、訪日欧米人が増加したことが平均消費額を大きく引き上げたと言えるでしょう。
2つ目は、チケットが高額だったことです。
最多8試合が開催された東京スタジアムでの試合のチケット価格は7,000円～40,000円でした。(セット券やホスピタリティチケットを除く一般チケットの価格)
したがって、ラグビーW杯を観戦した訪日外国人の平均スポーツ観戦費は5.9万円と高額でした。
これだけ高額なチケットが、用意された185万枚のうち184万枚も売れたのです。
3つ目は、大会が長期間に渡ったことです。
ラグビーW杯は9月20日に開幕し、11月2日に閉幕しました。大会期間は約1か月半に渡ったのです。
準優勝のイングランドは9月22日に初戦を行い、11月2日の決勝まで戦い抜きました。
これを追いかけるイングランドのファンの訪日滞在日数は増え、宿泊費や食費といった支出も増加したと考えられます。
実際に、ラグビーW杯を観戦した訪日外国人の平均泊数は13.3日と、観戦していない人の8.2日と比べて5日も多かったことが分かりました。
4つ目は、試合が全国各地で行われたことです。
ラグビーW杯は、北は北海道・南は熊本までの全国12会場で行われました。
したがって、試合観戦をするファンの飛行機や新幹線での交通費も増加しました。
例えば、プール戦4試合+準々決勝1試合を行ったフランスの試合会場は、東京→福岡→熊本→横浜→大分でした。
ラグビーW杯を観戦したフランス人の交通費は7.4万円で、観戦していない訪日フランス人の約2.5倍でした。
ラグビーW杯でビール需要増加！
ラグビーファンはビールの消費量が大きいと言われています。実際のところ、今回のラグビーW杯でのビール消費はどれほどだったのか見ていきたいと思います。
ラグビーW杯2019ワールドワイドスポンサーであるプレミアビール「ハイネケン」を取り扱う飲食店は今年1～9月に4,000店舗増加しました。
英国風パブを展開するHUBは、9月の既存店客数が2018年同月比16.8%増・全店売上高が26.6%増で、10月の全店売上高が25.6％増と2か月連続で大幅な増加を記録したことを発表しました。（HUB株式会社IR情報10月度ｇ悦治速報）
HUBではハイネケンを販売していることに加え、ほぼ全店でラグビーキャンペーンを実施したり、訪日外国人向けに英語のメニューを配置するなどしてラグビーファンの集客に成功しました。
新横浜店では、試合開催日のビールの売り上げが通常の10倍にもなったそうです。
試合前後に外国人客が多く集まっており、他店舗でもパブリックビューイング代わりに多くの客が訪れました。
また、コンビニ等の小売店での販売数量も前年同時期比で7割増加したといいます。
その結果、ハイネケンの9月の販売数量は前年同月の3.4倍を記録しました。9～11月の大会期間全体でも、日本国内でハイネケンを販売するキリンはハイネケンの販売数量が前年同期比2.2倍になると見込んでいるようです。
今大会ではビールの売り子を1,600人確保し、各試合50~400人派遣しました。
収容人数41,000人の札幌ドームで行われたラグビーＷ杯の試合では、1試合で18,000ℓ以上のビールが消費されました。
この数字は、同じスタジアムを使用する北海道日本ハムや北海道コンサドーレ札幌の１試合での平均消費量の約4.6倍に相当します。
また、「さっぽろ大通ビアガーデン」の1日の平均消費量は約15,000ℓも上回りました。
ファンゾーンでのビール消費も顕著でした。
大分のファンゾーンでは、14日間で20,745ℓ（500㎖容器で41,490杯分）を提供しました。
特に、準々決勝イングランド－オーストラリア戦が大分で開催された日は、ファンゾーン来場者の約9割を外国人が占め、約4,200ℓ（同8,400杯分）ものビールが飲まれたそうです。
【予測】東京オリンピック・パラリンピック観戦者の訪日滞在日数と訪日中の消費額は⁉
同じスポーツイベントとして捉えて、東京オリンピック・パラリンピックにおいてもラグビーW杯と同等のインバウンド効果があると仮定して考えます。
ラグビーW杯を観戦した訪日外国人は、観戦していない訪日外国人と比べて滞在日数は約1.6倍で一日当たりの消費額は約1.5倍を記録しました。
2019年7-9月期の訪日外国人全体の平均滞在日数は10.6日で平均消費額は165,425円でしたので、東京オリンピック・パラリンピックを観戦する訪日外国人の平均滞在日数は約17日で平均消費額は約397,000円と予測されます。
今回はラグビーW杯がインバウンドに与えた影響の大きさを見てきました。
しかし、開催前にこれだけの影響があるとは考えていなかった方も多いのではないでしょうか。
東京オリンピック・パラリンピックは基本的に東京でのみ行われ開催期間が短いですが、ラグビーW杯と比べて10倍超の206の国と地域が参加する予定です。
したがって、ラグビーW杯によるインバウンド効果は訪日欧米豪人に偏っていましたが、東京オリンピック・パラリンピックでは東アジア地域(中国・韓国・台湾・香港など)からの訪日外国人の訪日消費額が増加するなどの効果が見込まれます。
これを機に東京オリンピック・パラリンピックに向けたインバウンド施策を考えるきっかけとなりましたら幸いです。
Paykeではインバウンドの最新情報やインバウンド対策事例など情報発信を行っております。
ぜひ、そのほかの情報もご一読いただければ幸いです。
＞2019年7-9月期のインバウンド状況についてまとめたこちらの記事もご覧ください。
ラグビーW杯と日韓関係悪化による影響について考察しています。