12月に入り、ウィンタースポーツの季節が間近に迫ってきました。
しかし、ピーク時(1998年)は約1,800万人にまで達していた日本人のウィンタースポーツ人口は、2015年には4割程度の740万人にまで減少しました。
そこで現在、スキー場などの冬季観光地ではインバウンド誘致に力を入れています。
今回はインバウンド誘致のために行っているスキー場のさまざまな取り組みについて見ていきます。
日本のスキー場が訪日外国人に人気の理由とは⁉
日本のスキー場を訪れる訪日外国人はざっくりと欧米人とアジア人の2種類に大別できます。
訪日欧米人スキー客は、上級者が多く、訪日の主目的がスキーで滞在日数は長い傾向にあります。
訪日欧米人スキー客の中でも特に多いのが、全人口の16%がスキーヤーだと言われているオーストラリア人です。
オーストラリアは南半球に位置しているため、夏休みシーズンの1月に訪日すると一年中スキーを楽しむことができます。
実際に2019年1月だけで約7万人ものオーストラリア人が訪日しました。
また、水分量が少なくサラサラなパウダースノーは上級スキーヤーの憧れであり、特に日本の雪質は高く非常に人気です。
訪日アジア人スキー客は、初心者が多く、訪日の主目的はスキーではなく、他の観光を楽しんだ後に短期間でスキーを楽しむ傾向にあります。
訪日アジア人は、スキー場を1~3日程度滞在する観光地として捉えています。
特に、タイ人やインドネシア人は雪を見たことが無い方も多いため、雪と触れ合いたい気持ちが強く、スキーは積極的に滑らない傾向にあります。
ただし、この訪日アジア人マーケットの伸びは非常に顕著です。
【スキー場】日本人カップル・ファミリー向けから訪日欧米人スキー客向けへ
現在の日本のスキー場や宿泊施設はバブル期に建てられたものが多く、老朽化による建て直しが必要なものが増えています。
また、従来の日本人向けの施設では訪日欧米人にとっては不便な点も多く、建て直しを機に欧米人向けの施設へと変化させる施設が増加しています。
例えば、岩手県の安比高原スキー場は、圧雪をせずふわふわの新雪の上を滑ることができるバックカントリーエリアを5ヘクタールから60ヘクタールへ大幅に拡大しました。
圧雪とは初心者でも滑りやすいように新雪を押し固めることであり、上級者が多い欧米人スキー客は圧雪を嫌います。
他にも、内湯のある客室を増やす宿泊施設も増えています。
訪日欧米人は、知らない人がいる中で裸になり、同じお湯をシェアすることに抵抗感を示す人が多く、またタトゥーが入っているために外湯に入ることができないという問題がありました。
訪日欧米人スキー客は滞在日数が長期のため、たまには朝から飲酒したいという要望があり宿泊施設の飲食店の開店時間を早める施設もあります。
磐梯山温泉ホテルはバーの営業開始を午後7時から午前9時にしました。
お土産として地酒の販売も始め、朝食後から買ったり飲んだりする訪日外国人が多く、売り上げは大幅に増えたようです。
訪日アジア人向けの短期型スキー体験
訪日欧米人とは対照的に、短期でスキー体験をしたく、初心者が多い訪日アジア人向けのサービスも近年増えています。
新潟県のGALA湯沢スキー場は、ガーラ湯沢駅と直結しており、上越新幹線で東京駅から1時間15分で到着するのでアクセスが抜群に良いです。
早朝からスキーを楽しむ日本人スキー客と違い、訪日外国人客はホテルでゆっくり朝食を取ってから訪れるので、スキー場への到着は昼頃になります。
したがって、普段なら空いているはずの昼間の時間帯にスキー受付をするので、日本人スキー客と訪日外国人客で受付時間の分散化が自然と図られています。
また、初心者が多い訪日アジア人向けに中国語とタイ語でのスキーレッスンを提供しています。
日本人インストラクターの脇に通訳スタッフを配置し、同時通訳した内容を無線端末から発信し、各受講者が装着しているスピーカーヘルメットにリアルタイムでインストラクターの指導を伝えレッスンを行います。
イヤホン等と異なるため耳を覆わなく、音声は聞き取りやすく安全です。
GALA湯沢ではスキー初心者でも飽きずに楽しめるように、かまくら体験・雪だるま作り・雪見温泉、さらには日本古来の「かんじき」を履いての雪山散策といったプランを用意しています。
スキーだけではなくさまざまなプランを用意することで客が分散し、スキー場が必要以上に混雑することがなくなりました。
こうした施策の結果、GALA湯沢の外国人来場者数は2015年から2017年にかけて約3倍もの増加を記録しました。
急上昇する訪日中国人のスキー熱
中国人の潜在的スキー人口は1,210万人と世界第3位であるにもかかわらず、中国国内にスキーリゾートはわずか84か所しかありません。
また、中国では2022年北京冬季オリンピックに向けてスキー市場が急成長中です。
スキーリゾートが100か所以上ある国は日本を除くと、アメリカ・フランス・イタリア・オーストリアで欧米に偏っています。
北京オリンピックを控えて時間的・地理的に日本のスキーリゾートは中国人スキー客を取り込むチャンスであると言えます。
データを見てみると、中国人に人気の海外スキー目的地は日本が55%を獲得し1位です。
また、中国人富裕層に絞った同様の質問でも日本は32%を獲得し1位でした。
莫大な潜在的中国人スキー客と、中国人富裕層を今後どのように取り込んでいくかが1つのカギです。
今回はピーク時から大幅に客数が減少したウィンタースポーツが訪日外国人のニーズを上手くとらえることで復活を果たしつつある例を取り上げました。
今後日本では少子高齢化が進み国内マーケットが縮小していく中で、訪日外国人数は増えてインバウンド市場はさらに拡大していくと考えられています。
そのような状況で今回取り上げたような取り組み・施策が求められる場面は増加していくと思います。
インバウンドを考える中で参考になりましたら幸いです。
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