【インバウンド】茨城空港の現状とこれからの課題

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訪日外国人の入国経路のうち「地方空港」が25%を占めており、10年前の15%程度から大幅に増加しています。

今回は、11日に開港10周年を迎えた茨城空港について紹介します。
茨城空港は当初、「税金の無駄遣い」や「需要が見込めない」といった批判の声がありましたが、現在では「地方空港の成功モデル」と言われています。

茨城空港はなぜ必要だった?

茨城空港は以下の背景から2010年に開港しました。
自衛隊との共用空港であり、普段使われていない自衛隊基地を転用したため、通常500億円かかる建設費を220億円程度に抑えられました。

2000年代後半の首都圏では、①伸び続ける国際航空需要に対して不足する発着枠②空港空白地帯の北関東③航空自由化への対応といった問題を抱えていました。

 

①伸び続ける国際航空需要に対して不足する発着枠

 

当時は訪日外国人を含む国際線利用者が増加し続けており、そのうち4分の3は首都圏の空港を利用していました。
しかしながら、首都圏の空港は羽田と成田の2つのみで、その処理容量は限界を超えていました。

 

②空港空白地帯の北関東

 

北関東地域は最寄りの空港まで2、3時間を要していました。
羽田空港から日光までは約200分、草津温泉までは285分かかるため、北関東の観光地は苦戦を強いられていました。

 

③航空自由化

 

国際路線で政府間の取り決めではなく航空会社の判断で路線や便数を柔軟に設定できるようにする協定です。
しかし、前述の通り首都圏の空港の処理容量は限界を超えており、対応できる状況ではありませんでした。

 

また、世界の大都市は基幹空港に加えて、セカンダリー空港を整備してきました。
例えばロンドンは、ヒースロー空港のほかにスタンステッド空港やルートン空港やガトウィック空港があり、フランクフルトはフランクフルト空港のほかにフランクフルト・ハーン空港があります。
セカンダリ―空港は、基幹空港ではなおざりされてしまいがちなLCCやチャーター便などのニッチな航空需要に対応します。
そこで茨城県は都心から約100キロメートル離れたセカンダリ―空港として茨城空港の整備を進めました。

当時はLCCが普及し始めたものの、成田空港第3旅客ターミナルオープン前だったので、LCC用のターミナルが求められていました。
したがって茨城空港は様々な面で低コスト化を推進しました。
例えば、ボーディングブリッジを使わずタラップでの搭乗にすることで、航空機折り返し時間の短縮、ボーディングブリッジの設置・維持管理費用の削減に繋がっています。
また、自走式による航空機運用によって、プッシュバック作業に必要な車両等の導入・維持費用の削減、地上作業員の削減、航空機折り返し時間の短縮といった効果を上げています。
こうした努力の甲斐あって、航空会社が支払う発着料を羽田や成田の3割に抑え、LCCを招致することに成功しました。

 

【右肩上がり】茨城空港外国人利用者数

茨城空港の外国人入国者数は、2017年度を除いて増加を続けています
2017年度は、中国南方航空の撤退などにより前年比-37.5%と大幅な減少を記録しました。
しかしその後、春秋航空の新路線誘致やチャーター便の積極的な受け入れによって再び増加傾向を見せています。
2016年度のチャーター便運航は8便のみでしたが、2017年度は53便、2018年度は122便と増加しています。

現在の定期便は国内4路線と中国(上海・西安)と台湾の海外3路線です。
そのうち国際線は春秋航空・タイガーエア台湾が運航しており、全てLCCです。

 

【茨城空港】外国人入国者数の推移

 

一方で、茨城空港は自衛隊と共用しているため、現状ではこれ以上の発着便の拡大は難しい状況です。

 

【新型コロナウイルス】全中国便、3月下旬まで運休

昨年のインバウンド市場全体のトピックは日韓関係悪化による訪日韓国人の減少でした。
しかし、茨城空港の外国人入国者のうち韓国人は7.7%程度だったため、大きな影響を受けませんでした。

一方で、外国人入国者の70%以上を中国人が占めているため、新型コロナウイルス(COVID-19)流行の茨城空港への影響は大きいとみられます。

 

【茨城空港】外国人入国者の国籍

 

実際に、すでに新型コロナウイルスによって、茨城空港に就航する国際線定期便2路線とチャーター便を合わせた中国便5路線を3月下旬まで運休しています。(2月17日発表)
また、今月開港10年を迎え、空港関係者向けの記念式典を8日、一般向けの記念イベントを14日と15日に予定していましたが、いずれも延期されました。

 

【茨城空港】新型コロナウイルス流行による運休便

 

 

【課題】茨城県内での観光消費を伸ばす

外国人入国者数は一時減少したものの、茨城空港は当初の低評価を覆すように路線を順調に増やし、2019年の外国人入国者数は6万5,000人弱を記録しました。

一方で、茨城空港が県内にもたらす経済効果は薄く、むしろ県外に流れているとの指摘があります。
横浜国立大学の居城教授の試算によると、茨城空港の経済波及効果は東京都内が14億1,280万円なのに対し、茨城県内は4億9,220万円となっています。
また、現状のルールでは発着枠がほぼ満杯のため、前述の通りこれ以上の路線拡大の余地も乏しいです。
したがって、現状「1時間に1発着」という発着枠のルールについて、将来的な増便や新規路線就航を見据えて協議を進める考えです。

また、茨城県空港対策課は、茨城空港の利用者を県内の観光地に完全に囲い込むのは難しいことは理解しており、県内で1泊でも滞在してもらい茨城を認知してもらうことに力を入れています。

 

[施策① 都内直行バスへの補助廃止]

大井川知事は、茨城空港とJR東京駅間の直行バスへの運行補助を2020年度から打ち切る方針を示しました。
現在、直行バスは運賃1,530円で運行しており、茨城空港の利用者は500円で利用でき、2018年度は約11万8,000人が利用しました。
この施策により茨城空港の知名度を高め、利用者を増やすことに成功しました。
ただ、訪日外国人を中心にほとんど茨城県で消費することなく、直行バスですぐに東京に行ってしまうという問題を抱えています。
2019年度予算では運航補助金として約7,500万円を計上しており、今後はその予算を県内周遊のための交通ルートの整備に配分し、県内観光を活性化させるために使用する予定です。
また、運航補助金を打ち切っても空港の利用者数への影響はほとんどない見通しです。

 

[施策② 愛称変更]

先月、茨城空港の愛称変更を検討する初会合が開かれました。
現在の愛称は「茨城空港」で、正式名称は「百里飛行場」です。
茨城空港の知名度を国内外で高め、さらなる利用者の増加を目指す考えです。

愛称変更の例としては、2016年に佐賀空港の「九州佐賀国際空港」への愛称変更があります。
LCCの就航などによる訪日外国人の誘致をする中で、国際空港だということを分かりやすく表すための施策でした。
愛称変更以降、佐賀空港の国際線就航数・国際線利用者数ともに増加を続けています。
※昨年は減少。韓国便の運休が続いているため。

茨城空港の現状や愛称変更の有無・候補案などを議論し、5月には候補案を決定する予定です。
桜美林大学の戸崎教授は「愛称の変更が県民にも国際的なマーケティングにも効果がないと埋没する。今の茨城という名前が全世界的に通用するかを検証しなければならない」と指摘しています。

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