【インバウンド】 新型コロナウイルス流行による訪日クルーズ船への影響は!?

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年間クルーズ船寄港回数が2500回を超え、訪日クルーズ旅客数が5年で5倍以上増加するなど訪日クルーズ旅行が近年人気を集めています。
一方で、横浜港に寄港していたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染が起こり、クルーズ船での旅行に不安が広がっています。
乗客約3,700人は既に下船しましたが、706人が感染し7人が死亡しました。(3月4日現在)

今回は、訪日外国人による訪日クルーズ旅行の現状と新型コロナウイルス流行による訪日クルーズ旅行への影響について紹介します。

 

 

【データ】訪日クルーズ旅客数とクルーズ船寄港回数(2019年)

 

2019年の訪日クルーズ旅客数は前年比12.2%減の215.3万人(訪日外国人数の約6.8%)でした。
訪日クルーズ旅客数減少の理由としては、訪日クルーズ旅客数の約8割を占める中国からのクルーズ船が減少したことが挙げられます。
中でも中国中部(上海など)発の訪日クルーズ旅客数が前年比-32.4%で大幅な減少を記録しました。
これは近年の中国クルーズ市場の急拡大に対応して各船会社が配船を急増させた結果、採算性が悪化したことを踏まえて、2018年以降中国への配船を減らしていることが原因です。

また、クルーズ船の寄港回数は前年比 2.2%減の2,867回でした。
詳細に見てみると、外国船社のクルーズ船寄港回数は前年比約1%増の1,932回でした。
前述の通り中国中部発の訪日クルーズ船は減少しましたが、それ以外の訪日クルーズ船は増加したため、わずかに増加しました。
一方で、日本船社のクルーズ船寄港回数は前年比約8%減の935回でした。
瀬戸内海を周遊するクルーズ船の周遊頻度の変更が減少の主な原因です。
したがって、クルーズ船の寄港回数が微減したのは日本船社のクルーズ船寄港回数が減少したことが原因です。

寄港回数は微減であるにもかかわらず訪日クルーズ旅客が10%以上の減少を記録した理由は、一隻当たりの客数が多い中国中部発の大型訪日クルーズ船が減少したためだと考えられます。

 

 

日本のクルーズ船寄港地

 

一般社団法人 日本外航客船協会(以下JOPA)によると、日本にクルーズ船寄港地は196港あります。
外国船の寄港回数が年間200回を超えたのは、那覇港(251回)・博多港(205回)です。
続いて長崎港(178回)・平良港(146回)・石垣港(146回)と続きます。
外国船寄港回数のうち60%以上を九州と沖縄の港が占めています。

クルーズ船の地域別寄港回数

 

しかし、大半の港は貨物船向けとなっており、5年で5倍以上増加している訪日クルーズ旅客の受け入れ態勢が整っていないのが現状です。
中には貨物ヤードでの旅客受け入れが発生している港もあります。
また、クルーズツアーは1年以上前からの販売も多いものの、岸壁の優先予約の仕組みがないためツアー造成に支障が出ていました。

こういった背景から、国土交通省は9港(横浜港・清水港・下関港・佐世保港・八代港・鹿児島港・那覇港・本部港・平良港)を国際クルーズ拠点として指定しました。
国際クルーズ拠点に指定されると、大型船が寄港できる岸壁や旅客ターミナルビルが官民連携して整備されます。
整備に協力した船会社が優先的に岸壁を予約できる仕組みとなっているため、寄港計画を立てやすくなり寄港回数が長期的に安定することを見込んでいます。
クルーズ世界最大手のカーニバルコーポレーション&plc社やロイヤルカリビアンクルーズ社といった外国の船会社からの投資も見られました。

 

 

【今年7月OPEN】東京国際クルーズターミナル

 

世界が注目する東京五輪が開催される今年、新たな首都の玄関口として東京国際クルーズターミナルがオープンします。
文化・エンターテインメント・食など、魅力的な観光資源が集積する都内各地へ、また、日本全国につながる陸と空の入口へと、抜群のアクセスを誇るので訪日外国人が日本観光の拠点として利用することを想定しています。

舞浜(東京ディズニーリゾート)・銀座・渋谷といった人気スポットや羽田空港・品川駅・東京駅といった他都市への出発地となる場所へは公共交通機関(電車・バス)を利用すると30分程度とアクセスが良いです。
また、車でのアクセスとしては、羽田空港・東京駅まで25分、品川駅・東京ディズニーリゾートまで20分となっています。
クルーズと飛行機や新幹線を組み合わせた新たな訪日旅行の形が生まれるのではないかと期待されています。

 

【アクセス】東京国際クルーズターミナル

 

7月の開業後の第一船となるのはロイヤル・カリビアン・インターナショナル社が運航し、乗客定員4,246名を誇るスペクトラム・オブ・ザ・シーズです。神戸から入港後、上海へ航行する予定です。

 

 

【新型コロナウイルス】寄港予定の訪日クルーズ船のキャンセル相次ぐ

 

国際クルーズ拠点に指定されている横浜港では、例年は3月のみで15隻ほどのクルーズ船の寄港がありますが、新型コロナウイルスの影響で今月の寄港数は0隻となっています。
また、同じく国際クルーズ拠点の清水港では、今年1月~7月頭までの全ての外国客船の寄港がキャンセルとなっています。(3月9日時点)
1〜4月に佐世保港に寄港予定だったクルーズ船のうち、計13隻が入港がキャンセルになった(2月27日時点)ことで、佐世保市内だけでも観光消費額2億6,000万円が損失として試算されています。

 

クルーズ船は一隻のみで数百人から数千人の観光客を寄港地へ呼び込み、寄港地でのオプショナルツアーや免税店でのお土産購入での経済効果が見込まれます。
また、地域経済の活性化のみならず、寄港地の評価・知名度の向上や訪日リピーターを獲得する重要な機会となっています。
業界団体によると、乗客による寄港地での消費額は一隻平均3,000万円前後とのデータもあり、日本全国のクルーズ船キャンセルによる経済損失は数10億円規模になるとも言われています。

 

クルーズ船は性質上、出発すると次の寄港地までは密室状態となります。
したがって、各クルーズ船会社は新型コロナウイルスに対して最悪の事態を想定してキャンセルという対応をとらざるを得ません。
流行が世界的に終息しない限り、訪日クルーズ船への影響は続いていきそうです。

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