【フードバリアフリー】ムスリムやヴィーガンに対応する「食」のおもてなし

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訪日外国人が増加するにつれて、「食」への対応が重要になっています。
ヴィーガン等のベジタリアンやムスリムなど食事に制限がある人でも食べられる料理を提供したり、食材や調理方法を分かりやすく表示したりすることで食に関するバリア(障壁)をなくすという考え方を「フードバリアフリー」と言います。また、食物アレルギーや生活習慣病といった健康上の理由で食べられないものがある人への配慮もフードバリアフリーの一つと言えます。
今回は、フードバリアフリーについて考察し、増加する訪日外国人に対して「食」の観点からおもてなしする方法について知っていただきたいと思います。

 

宗教上の理由で食事に制限がある人への配慮

無宗教の割合が多い日本ではあまり馴染みがありませんが、信仰している宗教や宗派ごとに信者が避けている食材があります。
今回は、宗教人口でそれぞれ2位と3位のイスラム教とヒンドゥー(ヒンズー)教の食事に関する制限を取り上げます。

世界の宗教人口(2016年)

 

  • イスラム教徒(ムスリム)

信者が多い国・地域:マレーシア・インドネシア・パキスタン・インドなど

イスラム教徒が避ける食材のうち特に注意が必要なもの:
「豚」「アルコール」「血液」「宗教上の適切な処理が施されていない肉」
※この4つの食材はコーランで食べることを禁じられているものです。

教義で禁じられているわけではないが嫌悪感を示す食材:
「うなぎ」「イカ」「タコ」「貝類」「漬け物などの発酵食品」

※豚以外でも肉は、アッラーに祈りを捧げ、 特殊な屠殺方法を行ったハラル・ミールしか口にしません。
※豚に関しては、姿を見ることさえも嫌悪されるため、メニューに豚のイラストや写真を載せることは避けたほうがよいでしょう。
※「ブイヨン」「ゼラチン」「肉エキス」「ラード」など豚の肉・骨・脂が使われた食材は食べることができません。
※アルコールは飲用以外にも、「料理酒」「みりん」のように調味料としても使われることがありますので、特に注意が必要です。

ハラルは、イスラム法において「許可された」「合法的」という意味であり、生活全般に関わる言葉です。イスラムの教義に則って食べることが許可されたものを指し、野菜・果物・大半の魚介類はハラルです。

 

  • ヒンドゥー教徒

信者が多い国・地域:インド・ネパール など

ヒンドゥー教徒が一般に避ける食材:
肉全般(牛、豚)、魚介類全般、卵、生もの、五葷(ごくん:ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ、アサツキ)

※多くのヒンドゥー教徒は、肉全般を避けますが、肉食をする人もいます。その場合でも食べる対象は、鶏肉、羊肉、ヤギ肉に限定されます。
※牛は神聖な動物として崇拝の対象となっているため、食べることは禁忌とされています。
※豚は不浄な動物とみなされ、基本的に食べることはありません。
※肉そのものだけではなく、出汁や脂肪が入っているものも避けますので、 「ブイヨン」「ゼラチン」「肉エキス」「バター(牛乳の脂肪)」「ラード(豚の脂肪)」「ヘット(牛の脂肪)」などを調理時に使わないよう注意が必要です。

今回紹介した宗教のほかにも食事に制限のある宗教はありますのでご注意ください。
また、同じ宗教でも宗派によってルールが違うこともあります。
大切なことは、食材・調理方法といった情報を分かりやすく示すことです。

 

 

最近よく聞く「ヴィーガン」とは⁉

ヴィーガンとは、「完全菜食主義者」のことで、ベジタリアンの一種です。
ベジタリアンと言っても野菜しか食べないのは一部で、食べる食材ごとにさまざまな分類がされています。
野菜・乳製品を食べる「ラクト・ベジタリアン」、野菜・乳製品・卵を食べる「ラクト・オボ・ベジタリアン」、野菜・乳製品・卵に加えて魚は食べてもよい「ぺスコ・ベジタリアン」などです。
ベジタリアンの中でもヴィーガンは厳格で、食事は完全菜食で、ファッションおいても毛皮やファーなどの動物を利用したものを避ける場合もあります。
ベジタリアンは近年、欧米を中心に急激に増加していますが、動物愛護・食糧不足・健康問題など理由は様々ですので、ベジタリアンに明確なルールは存在しません。
例えば、厳格なヴィーガンの中にも、畜産されていないことから、ジビエ料理は食べるという方もいます。
個人個人の考え方を尊重するために、原材料・調理方法などの詳細な表示や対応をすることが重要です。

 

 

「崎陽軒」と「北海道」が行ったフードバリアフリー化

近年、フードバリアフリー化を推進している企業・自治体が増えてきています。

シウマイ弁当で有名な崎陽軒は、今年8月からヴィーガン向け弁当の販売を開始しました。
「野菜で作ったお弁当」には、ベジタブルシウマイ・ソイミートの甘酢和え・ピクルスなどが入っています。
肉の代わりに野菜のだし・ショウガ・しょうゆなどで味付けしたソイミートを使用し、五葷(ごくん)は不使用です。
商品パッケージには英語での商品説明に加えて、イラストを利用して使用していない食材を示しており、訪日外国人にとっても非常に分かりやすいデザインになっています。
3個から注文に応じ、訪日外国人を受け入れる観光関連業者などからの注文を見込んでいます。
崎陽軒では、今後もさらなるヴィーガン対応商品の拡大も検討していくようです。

崎陽軒「野菜で作った弁当」の商品パッケージ

 

北海道ではベジタリアンが多いとされる欧米からの訪日外国人の誘致を目指して、フードバリアフリー化を推進しています。
昨年度すでにハラルに対応した店舗を調査しており、今年度はホテル・観光施設・飲食店が提供する食事のベジタリアンへの対応度の調査をしています。
調査した内容はホームページで発信して未対応の飲食店に対して対応を促すそうです。
また、同じく北海道の函館ホテル旅館協同組合は函館大学の生徒と共同で、ハラルやベジタリアンの食事に対応した道南20店舗を紹介した英文ガイドマップを作成しました。

今後さらにインバウンドが増加していく日本では、食事に制限のある人々の訪日も増えていくでしょう。つまり、フードバリアフリーの重要性は高まっていくと考えられます。
これを機に飲食店や食品メーカーではフードバリアフリー化を進めてみてはいかがでしょうか。

 

 

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