コンサートやスポーツイベントなどの延期・中止など新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が各所に出てきています。
インバウンド市場ももちろん例外ではありません。
各国が不要不急の渡航自粛を呼び掛けている中、日本と海外を結ぶフライトは欠航が相次いでおり、インバウンド市場に多大な影響を与えているのです。
今回は新型コロナウイルスの流行によって引き起こされたフライトの減少と、インバウンドへの影響をまとめました。
欠航相次ぐ中国発着便
訪日外国人の70%以上は成田空港・関西空港・羽田空港のいずれかを利用して訪日しています。
しかし現在、新型コロナウイルス流行の影響でこの3空港の国際線到着便の約15%が欠航となっています。(2月26日の国際線到着便)
特に関西空港は北京・上海といった大都市だけではなく、中国の地方都市を結ぶ便も多いので、国際線到着便の欠航率は約25%にも達します。
3空港の欠航便の8割以上が中国発のフライトです。台湾、香港、韓国と続きます。
最も多くの訪日外国人が利用する成田空港に到着する路線で欠航したフライトは以下の通りです。
2月26日時点で成田空港は13航空会社27フライトが欠航となっています。
東京と大阪は日本の玄関口。影響は地方にも。
続いて、地方空港の国際線到着便の状況を見てみます。
新千歳空港では約41%もの国際線到着便が欠航となっています。
欠航率が高い原因は、地方空港の場合国際線は欧米豪といった遠距離路線はほとんど無く、中国・韓国・台湾等の短距離路線が中心となっており、今回の新型コロナウイルス流行の影響を正面から受けてしまったことが挙げられます。
東アジア・東南アジア発だけではなく、欧米豪発など通常通り運航しているフライトであっても
旅行者が自主的に訪日旅行を控える動きもありますので、欠航した国際線到着便だけでなくインバウンド市場全体への影響は大きくなっています。
日本政府観光局(JNTO)によると、欠航の影響もあり2020年1月の訪日外国人数は前年同月比で1.1%(約30,000人)減の269万人でした。
ここ数年訪日外国人数は急速な増加を見せていますが、1%程度の減少を記録しました。
しかし、この減少は新型コロナウイルスの影響よりも、昨年から続く日韓関係の悪化による訪日韓国人の大幅な減少の影響が大きいです。
新型コロナウイルスの影響は2月以降の訪日外国人数に表れてくるものと予想されます。
また、訪日外国人の減少によって、地方の旅行業に深刻な影響が出てきています。
創業64年の老舗旅館を営む愛知県の冨士見荘が事業を停止していたことが明らかになりました。
同社は、訪日中国人の団体ツアー客が売上の柱でしたが、新型コロナウイルスの流行以降、中国人の団体ツアーのキャンセルが相次ぎ、事業継続を断念することとなったのです。
新型コロナウイルスの影響による破産は全国でも初めてですが、現在の状況が続くようだとこのような事態は増加するかもしれません。
日本の地方都市は東京・大阪などからの訪日外国人の団体ツアー客を積極的に迎えることで旅行業が成立していることが多いからです。
実際に、静岡県内で最も多くの訪日外国人を記録し、そのうち中国人が8割を占める浜松市では団体ツアーのキャンセルが相次いでいます。
総収容人数301名のホテルコンコルド浜松では、1月に885人(総収容人数の約9.5%)のキャンセルが確定しました。
2月には4,000人(同 約45.8%)、3月に3,000人(同 約32.2%)が予約を取り消すことを見込んでいます。
また、団体ツアーや貸切バス事業を行う遠州鉄道グループでは、3月までの予約が軒並みキャンセルになり、グループ3社の損失は計8,000万円に上る見通しです。
出典:静岡新聞「宿泊・観光に新型肺炎の影 浜松、伊豆で中国客相次ぐ解約」(2020年1月28日)
流行がこのまま続くようですと、近年訪日外国人に人気の3月下旬から4月にかけての花見シーズンにも影響が出てくる可能性があります。
4月は2番目に月別訪日外国人が多いので大きな影響が非常に高いです。(2019年のデータ)
新型コロナウイルス流行の終息を祈りつつ、手洗いうがいやマスクの着用など予防を欠かさずに行っていきましょう。
新型コロナウイルス流行によって普段マスクをする習慣のない訪日外国人もマスクを買い求めました。
その際のマスク需要の変化をPaykeスキャンデータから分析しましたので以下の記事もあわせてご覧ください。